~日本を信じる日本映画~  
「映画「シン・ゴジラ」
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 今回のコラム寄稿者は、YZTNRさんです。
 日本でしか作れない、最高の映画を作ってやる。
 「シン・ゴジラ」を観た時、その志は確かに存在し、成し遂げられていることを確信した。復活した日本製ゴジラ映画が、怪獣映画としてだけでなく、日本映画としても無類に面白い…これは間違いなく、2010年代を代表する、日本映画作品になるだう。一言でいえば最高。二言でいえば超サイコー! 情報量は詰め込めるだけ詰め込み、スピーディなカット割で次から次へと画面が転換する。怒涛の情報量が整然とコントロールされ、入り口から出口まであっという間に運ばれるジェットコースター映画になってる奇跡。フツーの人たちがそれぞれの立場でやるべきことを遂行し、ゴジラという国難を乗り越えるプロジェクトX。この表現は特撮映画に思い入れのない人でさえ心打たれ、現実をよく説明している。でも、ただ事じゃない爽快感は、それだけじゃ説明できない。綿密な取材、微に入り細にうがった考証に裏打ちされたリアリティを積み重ねて、「思考停止していたタブー」を踏み越えているから」じゃないか。『シン・ゴジラ』は多くの人々を囚われていた何かから解放する「憑き物落とし」だったのだ……。今回のゴジラは東北大震災であり、原発事故だ。海から押し寄せて文明を瓦礫の山と炎の渦に叩き込む脅威、赤く光ってメルトダウンしそうな怪物を冷やそうとホースを突っ込む作戦行動。その進行ルートが放射能の拡散と一致している足取り。そもそも市民に放射能を検出する計器が普及してるこの世界は「その後」かもしれない。
 しかし、ゴジラは日本のせいでもなんでもない。政府がどうの東電がどうのという「原罪」がないし、たびたび飛び出す「想定外」という言葉も、本当に想定外だから。原発事故は昔から考えて用意しとけよ!だったが、巨大不明生物災害なんて誰も想定してるわけがない。原発事故当時、急にバトンを渡された民進党(当時は民主党)政権。「枝野寝ろ!」とツイートしてた人達の何割が今でも民進党支持かを考えると切なくなるが、ほとんどの人が死力を尽くして頑張っていたはず。日本政府が最大のポテンシャルを発揮したはずの事件が、今度は「原罪」抜きで起こったら? あの災害をゴジラに置き換えて「政治色を抜きにしたシミュレーション」にしたことで、壮大なエンターテイメントに仕立てている…。巨大不明生物(ゴジラ)災害に対して、日本政府は会議また会議。「非効率“じゃない”会議」が描かれた邦画や実写ドラマは珍しいというか、役にも立たない御用学者をサクッと切り捨ている。はじめ巨大不明生物の可能性に耳が貸されなかったのも、憶測による風評被害が現実にあった過去を考えると頷ける対応。「シッポ」がテレビに映されて、さっと前言を翻すいい意味での節操なさも政治家の集まりらしい。会議に時間をかけ、その結論を受けて各省庁が動くのも民主主義の原則に則ってる。官僚が勝手に動くことは「効率的」ではなく独断専行だし、統一した意志のもとで役割分担してこそ無駄がなくせる。「どの省庁に言ったんですか?」(という趣旨のセリフ)は、文民統制が健全に機能してる証拠だ。大河内総理も周囲に丸投げしてるようで「詳しいやつに任せる」という態度はトップとして正しい。「総理!ご決断を!」と何度も繰り返される中で、まだ避難してない人を発見したときの苦渋の「決断」にも涙が出る。あの局面で別の判断をする為政者の下で住みたくないですよ。憲法第9条は「他国との間の紛争の解決の手段としては」であり、国家でもないゴジラに全く関係ないので、「日本の会議システムは非効率」という憑き物も落としてくれる『シン・ゴジラ』!過去ゴジラへの深いリスペクトもあり。巨匠・伊福部昭のBGMがここしかないというタイミングで流れ、ゴジラの咆哮も聞く人が聞けば昭和や平成ゴジラの各作品からチョイス。そもそもキーマンの「牧吾郎」って84年版『ゴジラ』に出た新聞記者の名前だし、口に液体を流し込む最終作戦も「薬は注射より飲むに限るぜ、ゴジラさんよ~!」=『ゴジラVSビオランテ』なんですよ。…ゴジラ映画の多くに協力している自衛隊。しかし、ほとんどはやられ役だ。現実の火力で巨大不明生物を倒したら身も蓋もないのは分かるが、それにしたって一撃で壊滅するなよ! アントニオ猪木の風車の理論は「相手の強さを引き出し、それを上回る強さを見せる」ことだった。自衛隊が強くないと、ゴジラも強く見えない。
 今回、おそらくゴジラシリーズの中では最強の自衛隊。不意を打たれることなくベストな状態で布陣し、戦車の砲撃は一発も外さず、戦闘ヘリからのミサイルは全弾命中。うん、現代の重火器管制システム、練度の高い自衛隊員による照準、しかもマトは全長100メートルを超えるデカさ。やっと自衛隊が全力を出し切れたから、初めて納得できる「敗北」が描かれたのだ。(ピエール瀧、最高!)やられ役の過去が長くてひどいほど、「憑き物落とし」の効果はてきめん。初代ゴジラで「列車を噛み砕くゴジラ」は印象に残りやすいシーンだったが、それから蹴飛ばされたり踏み潰されたり、日本の鉄道は60年以上もやられっぱなしだ。『シン・ゴジラ』でも京急がやられ、また古き伝統を守っていた。するとクライマックスで、電車に爆薬を満載した「無人在来線爆弾」を投入! ゴジラに対する人類の最終兵器が、ヤラレ役の底辺にいた電車。しかも京急の仇をJRが取った……どんだけ涙腺を刺激する文脈を重ねてくるんだ!その前には、地上からゴジラの足元に放った砲撃が進路に影響があったことや、米軍機が投下したバンカーバスターで流血が確認されたことで「大量の火薬」(航空機より質量が詰める列車×4)が有効という伏線ありきだ。日米安保に助けられてゴジラに復讐を果たした電車たち……と思うとグッとこみ上げてくる。『シン・ゴジラ』は日本にまとわりついていたモヤモヤを吹き払う「つきもの落とし」映画だけど、決して安易な「日本すごい」映画じゃない。石原さとみというファンタジーがいなければ、ゴジラの喉笛にアメノハバキリ(凝固剤を投入する車両部隊のコードネームで、ヤマタノオロチを倒した剣の名前が元ネタ)は届かなかった。その存在を通じて描かれたアメリカのあり方も、「国家のエゴむき出し」と「個人の善意」の合わせ技でで政治的に無色にしていたが、「どちらにしても日本の命運を手にしている」現実にしみじみ。ゴジラを倒せるポテンシャルがあるかもしれない我が国が、なぜ政治的・経済的に漂流しているのか。映画館から元気を持ち帰り、現実の「憑き物落とし」をしたくなる作品である。最後に印象に残ったセリフを抜粋!「人間を信じましょう。」ドイツのスパコン施設の人(Inge M)ゴジラの分子構造を解析するため、スパコンの貸与をお願いしたドイツの研究施設の女性の言葉。襲撃事件やテロに屈することなく、難民受け入れ政策を堅持すると発表したドイツらしい。尾頭さんの「ゴジラより怖いのは、私たち人間ね」という言葉の後に聞くと、言葉のあたたかみにホッとして涙が出そうになる。「牧元教授はこの事態を予測していた気がする。彼は荒ぶる神の力を解放させて、試したかったのかもしれない。人間を、この国を、日本人を。核兵器の使用も含めて、どうするのか「好きにしてみろ」と。」矢口蘭堂 内閣官房副長官(長谷川博己)牧元教授の行動に関しては謎が多い。「私は好きにした。君らも好きにしろ」というメッセージも含めて、登場人物ならびに観客にさまざまなことを問いかけてくる。この言葉は、矢口なりの解釈だろう。私たちはこの世を「好きにする」ことができる。私たちが好きにした結果は、これから現れる。今抱えている仕事も、子育ても、トラブルも、事態の収束なんてなかなかしないものだし、「今は辞めるわけにはいかない」のだ。だから、ゴジラを一旦凍結したって一山越えただけで、高揚感なんてありゃしない。ホッと深いため息をつくだけだ。この後もゴールのないマラソンが続くんだよね、でもまあ、がんばろうじゃないの、というのが『シン・ゴジラ』の隠されたメッセージなんじゃないだろうか。こうして並べてみると、『シン・ゴジラ』は働く人たちの話なんだなぁ、ということがよくわかる。「政治家や高級官僚、自衛隊の活躍ばかりが描かれて、現場の人々の仕事ぶりが描かれていない」という批判的な声もあるが、ゴジラVS自衛隊などのスペクタクルシーンの狭間に挿入されるこうしたセリフからチラッと見えてくるのは、まぎれもなく人々がそれぞれの仕事に向かう真摯な姿勢だ。
 たしかに、もっと多様な仕事に携わった人たちの顔も描いてほしかったという思いもある。たとえば民間のプラントで凝固剤の製造に携わった人々。彼らが「そんなの無理ですよ!」とか「わかった、任せとけ!」とか言っている様が見たかった。ヤシオリ作戦の直前、「我が国の最大の力は、この現場にある!」と矢口はスピーチしたが、肝心な現場はほとんど映らなかった。ただ、そんなのは求めはじめたらキリがない。あとは観る側の想像で補うことにしよう。もう一つ印象的だったのは、「仕事がデキる人はむやみに大声で叫んだり、やたらとキレたりしない」ということだ(矢口が一度キレるが、「先ずは君が落ち着け!」泉ちゃんに一瞬で制される。
安田については仕方ない)。もし、あなたの職場に大声で威張り散らしながら仕事できるアピールする輩がいたとしても、そいつは間違いなく無能です。
 最後に名セリフをもう一度。「私は好きにした。君らも好きにしろ。」牧悟郎 元城南大学統合生物学教授
 私は好きに書きました。みなさんも好きに書いてください。
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